事業活動《3つの委員会があり、様々な活動を行っています。》
2013.07.11
株式会社ダイオー「液体酸素・窒素・アルゴン製造プラントVSUAセンター」の見学会(産業政策委員会)
平成25年6月18日(火)に、株式会社ダイオー「液体酸素・窒素・アルゴン製造プラントVSUAセンター」の見学会を行った。
株式会社ダイオーは枚方市工業会の会員企業であり、昭和51年に誕生して以来、枚方の地で事業を行っている。近畿エリアで最大規模の産業ガス製造・供給網を持つ株式会社エア・ウォーターの関係会社である。
今回見学する「液体酸素・窒素・アルゴン製造プラントVSUAセンター」は、産業ガス製造・供給において先進的技術の応用・開発により、環境問題への貢献・地域貢献を実現しつつビジネスチャンスを拡大した事例である。
見学会には、その技術やビジネスモデルに興味を持つ 26名(事務局含む)が参加した。
プラントというと阪神や中京の臨海工業地帯の大規模なものが思い浮かぶが、株式会社ダイオーは大阪府の内陸部(枚方市)に位置し、しかもプラントはシンプルで細長い白い煙突のような小型のもの。この場所でこの小型プラントがもたらした大きなメリットとは何か。期待感が高まる。
産業ガス(酸素・窒素・アルゴンなど)とVSUAセンターについて説明を受けた後、プラントを見学した。
産業ガスとは
一般の家庭で使用される都市ガスやLPガスなどは異なり、製造業や医療の現場で使われるガス(窒素、酸素、アルゴンなど)のこと。
例えば、酸素は酸化性を利用して鉄の生成工程で不純物の除去に、他の物と化合しにくい窒素は半導体製造現場に、化学的に不活性な性質のアルゴンは溶接時のシールドガスにと、それぞれの特性を活かし、あらゆる産業の製造現場で使われている。
医療現場においても、生命維持に欠かせない酸素はもちろん、医療器具の滅菌用に特殊ガスが使われるなど、なくてはならないものである。
窒素、酸素、アルゴンはプラントで空気から分離製造され、タンクローリー車によりお客様のもとへ運ばれる。
ガスの地産
従来、産業ガスは大規模なプラントで製造され、お客様先にはタンクローリー車により遠距離輸送を行い届けられていた。産業ガスの様々な分野での利用の増加にともない、それぞれのお客様の需要に合わせ細やかな供給を行う必要が出てきた。
そこで考えられたのが "ガスの地産" というビジネスモデルである。
窒素、酸素、アルゴンは沸点の差を利用して空気から分離製造される。それぞれの沸点は、窒素が約-196℃、アルゴンが約-186℃、酸素が約-183℃、この極低温で液体として分離される。窒素とアルゴンの沸点の差は10℃であるので分離しやすいが、アルゴンと酸素の沸点の差はわずか3℃しかない。株式会社ダイオーのプラントはエア・ウォーターグループの小型産業ガス製造プラントの10号機であるが、他の9つのプラントと異なりアルゴンを製造している。3℃という微妙な温度差をコントロールし純度の高いアルゴンを分離製造する、プラントを運転する技術に技あり!である。
製造された液化ガスは液体のまま極低温を保つタンクローリー車で運ばれる。
液化窒素に浸したバラの花やボールが完全に凍結し触れると粉々に壊れてしまうほどの極低温を保たなければならない。そして沸点より温度が上がるとたちまち気化してしまう。液化窒素を常温で撒くと一瞬で気化し空気と混じってしまう。液体ガスが入っている容器は中を沸点以下の極低温に保つため真空断熱二重構造になっている。輸送に使うタンクローリー車の中もこの容器同様の構造になっている。
見学を終えて
見学の後、活発な質疑応答が行われた。
VSUAセンターは、企業としての使命を大切にし、地域のお客様の要求に応えることを第一に考え、そこに高度な技術力が集結したときに実現されたイノベーションである。
株式会社ダイオーでは更に医療関連事業も展開している。単にガスを届けるだけでなく、それを通じたお客様の課題解決を大切にしたいという思いから発展した事業である。
枚方市工業会も単なる製造業の団体ではない。社会を考え、地域を考え、今後の事業のあり方を考え、互いに情報交換を行い、あるときは協力し、切磋琢磨している。今回の見学は相通じるところが多く有意義な見学会だったのではないだろうか。
枚方市工業会では、今後も様々な事業を通して、地域経済の振興と社会の発展のため活動を続けてゆく。